2018年度 「世界を知る会」
 
アメリカのICT教育と外国語教育in鎌ケ谷
 
 2019年2月10日(日)鎌ケ谷市総合福祉保健センターにて、世界を知る会「アメリカのICT教育と外国語教育 in 鎌ケ谷」が開催されました。
 アメリカの国務省が毎年、世界各国の若手研究者を招いて開く交流プログラム「International Visitor Leadership Program (IVLP)」に参加された大阪府教育センター小中学校教育推進室、教科教育推進グループ、主任指導主事・信田(のぶた)清志氏、リクルート次世代教育研究院 院長・小宮山利恵子氏による講演が行われ、市民、鎌ケ谷市教育委員会及び教員、市議、市内外教育に携わる人など約60名が参加しました。
 
 
 
講師紹介
小宮山利恵子先生
リクルート次世代教育研究院 院長、国立大学法人 東京学芸大学客員准教授
 リクルート次世代教育研究院の設立趣旨である『教育とテクノロジーの融合がもたらすイノベーションにより、これからの未来を創るすべての子ども達により良い教育を届け、学ぶ楽しさを感じて欲しい』とICT教育に関する分析・研究、また子どもの教育環境格差についての分析・研究などを実施すると共に、より良い教育の創造に繋がる各種活動を行う。
 日本では6人に1人の子どもが相対的貧困と言われる時代だが、今年1月には、内閣府主催「子どもの貧困対策マッチングフォーラム」でもファシリテーターを務め、メディアでも注目。本日は招聘プログラムIVLPに於いて、ワシントンD.C. ボストン、ケンタッキー州のルイビル、サンフランシスコと訪問し、主にテクノロジーを用いた教育について行政、教育機関、NPO等から学んだこと、米国における教育制度概要と招聘プログラムにて印象的だった事象について講演。
信田清志先生
大阪府教育センターカリキュラム開発部 小中学校教育推進室主任指導主事。
 前日雪が降る中、大阪よりお越し頂きました。関西大学大学院外国語教育学 研究科修了後、公立中学校等で教鞭を取られ、現在は大阪府教育センター主任指導主事として、大阪府内の小中学校教員を対象とした教職員研修や研究授業等での指導助言を中心に、関西圏での外国語教育研究学会・大学等で英語教育に係る講演等を行っておられます。
 本日は、21世紀の教育現状から外国語教育を考え、これからの教育について、また、米国国務省招聘プログラムIVLPに参加した際のお話や、難民向けの語学学校でのエピソードなども交え、外国語を学ぶ楽しさについて講演して頂きます。
 
 信田氏はこれからの教育は「①英語教育だけ見ていると見誤ることがある。②教育がどう変わっていくかを体験。③教師が一方的に伝えるのではなく、対話しながら主体的に学ぶことが求められる。」と述べられた。
 これからの教育を考える前にと前置きし、欧州のSchengen Agreement(シェンゲン協定・ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)に触れ、ヨーロッパで国境を開放して約30年の間に、インターネットの普及により、世界はInternationalからGlobalに急速に変化していると説明しました。会場の参加者でペアを組み、絵図など掲示して、相方に「何であるかを伝える」言語技術(説明)の活用を使ったプレイを実践した上で、2020年度教育改革を見据え、外国語教育の変化と時代の変化に対応する教育の在り方を話されました。
 ITの急速な普及により情報が世の中・国境を飛び越えていく。人間の関わりがInternational(国家間)からGlobal (地球規模) に移り変わったことにより、外国語教育の最終的な目的地点はネイティブのように話せることではない。Knocker-Uppers(工場で働く労働者を起こす仕事)を例に、産業革命で大きな変革が起きたように、AIの発達によって社会構造が変わってきている。淘汰される職業がある。教育分野では教育は知識を伝達するだけでなく、
① 生きて働く知識・機能を習得させる。
② 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力。つまり一問一答で答えを出すのではなく、答えを作り上げていく。
③ 学びを人生や社会に生かそうとする・学びに向かう力と人間の涵養を深めていく教育。
 外国語教育はその中の一つであり、大きな社会変革の中で深い学びをすることによって、人工知能と共存共栄していく社会を創り上げていく中での教育の一つが外国語教育。教師主導の教育では、今も昔も児童・生徒の反応は変わらない。主体的・対話的学びをするためには、教師自身が授業を変えていかなければならない。それを地域・社会が共有していかなければいけない。
 指導要領改訂によって小学校から外国語(英語)が教科として加わったが、小中学校の外国語は「言語活動」がキーワードとなっている。実際小学校で使用されている教材を紹介し、アルファベットを機械的に覚えさせるのではなく、音を聞きながら文字でさがすことで音と文字から学んでいく。色分けされたアルファベットを見て、色分けのルールを見つけていく。機械的に学ぶのではなく、思考しながら学んでいく。三文字の漢字が何の生き物を指すかという偏と旁を学ぶクイズなどを紹介し、教師が題材を与え、子ども達が自動的に学んでいく仕掛けをしていくことが教師に求められると話された。
 続いてIVLPでの体験を話された。IVLPを通じ実際に多様性を学んだ。3週間14カ国の人と一緒にアメリカ各地を回り、日本語は一切使える雰囲気ではなく、共通語は英語のみでした。移民の方々の授業と教科書を紹介し、スペイン語が話者の生徒への授業では、英文を読みシフト表を作成する。次に音声が流れ、音声に従ってシフト表をチェンジする。「聞く、話す、書く」が一体、且つ実際に使う事を想定した授業内容となっている。移民の方々に授業を行っていく、これから英語教育をどう行っていくかを考える大きな大会がシカゴで行われ、キーワードは「Engagement」。移民の方々と学校で「Engagement」どう創り上げていくかが鍵となっていた。
ギャラップ調査を示し、アメリカで3万人の大学卒業者にアンケートを実施。社会に出て幸福感を感じている人に、どんな教育を受けて来たのかと調査した結果、「経験的な深い学び」
を受けた人との結果だった。経験するだけでなく、社会とのつながりを感じられることが重要。日本の教育に置き換えると
① 学んだことを実際に使う場面設定がされている、また海外の人と実際にやり取りする。
② 学びについて刺激を与えてくれる教員がいた。母校の職員が人として気にかけてくれているという感覚。目標や夢を追いかけるのを勇気づけてくれる人が周りにいたという感覚。これからの教育を考えた時、一方的に知識を伝えるのではなく、学習者に体験させ、学習者に情緒的なサポートを与える事が必要だということが分かってきた。またそれが「Engagement」の言葉に集約されていた。
 違う言語、違うかたまり、違う習慣の人がひとつに暮らすのが”アメリカ”。多様性が当たり前のアメリカ社会では、前提条件として、あいまいな言葉では相手に伝えることは成立しにくい。日本とは現状が少し違うが、グローバル社会を考えると、世界へ出て行ったときに、自分の考え・意味をきちんと相手に伝えることが間違いなく求められる。日本の高校生はプレゼンテーションしている最中に、チラリと教師を見る。アメリカの高校生はプレゼンテーションしている間、教師がどこに居ようが関係なく、自分の伝えたいことをきっちりと伝えきる。どちらが良いということではなく、その点ではプレゼンテーション能力は、アメリカの方が優れていると言える。ただ日本の学生の緻密さは誇りに思います。
 これからの教育は社会の中でどのような自己=self(自分の考え・意見)をいかに創り上げ、相手に伝えていくかが外国語を学ぶ上で重要となる。その為に「生きて働く知識・技能」「未知の事項に対応できる思考・考え・表現」を、教科を超えて身に着けていくことが言葉を学ぶ上で重要になる。「言葉を学ぶ」ということはネイティブのように話せるようになることではなく、自分の考え・意見を持って、それを相手にしっかりと伝える。
 IVLPでの学びでは、”本当にあった温かい話“として難民のための学校を訪問した際のエピソードを披露した。人間同士の繋がりってどんなものなのか?内戦状況の非常に厳しいコンゴから来た難民のための学校を訪問しました。地域として受け入れ、地域が運営する学校で学んでいる。訪問した際、急に英語の授業を頼まれた。
その授業のアクティビティで担当していた生徒のおばあさんが、授業を終えて廊下で私と出会った際、バックの中からフルーツキャンディーをくれました。よく考えるとこれってすごい事ですよね。たまたま東アジアから来た英語が母語者でもない私を、仲間として受け入れる。
「他者を受け入れる・他者と一緒にやっていくということはどういうことなのか。それを教育の中で子ども達と一緒に作り上げていく。」これが、今後の語学教育だけでなく、教育全般を支えるのではないかと改めて思い知った。
 ペアーワークで順番に2枚の絵を見て、相手に何かを伝える。実は2枚の絵は同じもので向きを変えただけです。多様性という事は、あなたの側から見たら馬に見えるかもしれないけど、私の側から見たらカエルに見えるだけ。「人として繋がっていく。その違いをはっきり説明すること。相手の意見を尊重して造り上げていくことが、今後の社会と外国語教育ということをIVLPで学びました。」と締めくくりました。
 
 続いて、ICT教育研究を専門分野とし、学力の地域格差・経済格差、子どもの相対的貧困問題、教員の働き方改革にも関わる小宮山氏が、世界のテクノロジーの今と未来、アメリカの教育制度、ケンタッキー州における教育概要を、多様な生徒に対応する学びの提供としてのICTの活用を交え講演しました。
 かなり変わった経歴でと前置きし、大学院を卒業してから国会議員の秘書として4年半働き、その後結婚。実は母子家庭に育ち、自身の受けてきた教育を社会に還元したいという強い想いからベネッセに就職。その後、大の阪神タイガースのファンでありながら他球団代表秘書に応募。ゲームが子ども達の教育に使えるかもしれないと思い、GREEに転職。GREEで情報リテラシーの講演などを行い、2015年後半からリクルートで働く。自身の外国語教育は、大学院で東アジアの研究をしていたことから韓国の大学院に留学。就職後アフリカのチュニジアに留学し、アラビア語を勉強。その後IVLP、昨年後半、ハワイのイーストウェストセンターでリーダーシップの勉強をしてきました。
 リクルートが、2011年から受験サプリ(現スタディサプリ)オンライン授業を開始し、現在では18科目4万本の動画が見られるようになりました。全国5000校の内、約半分の高校が導入しています。
 私が所属しているリクルート次世代教育研究院では、主に下記2つのトピックを研究しています。
① 子どもの教育環境格差(経済的格差、環境的格差)の研究。(教育格差が学力格差につながってはいけない)
② AIを用いた個別習熟度別学習の研究(個々で学習の習熟度が違う)
昔は、一クラスの生徒の学習能力は「ひとコブらくだ」と言われていました。できる子とできない子が少し存在し、大半は、またまあできるからよくできる範囲に分布していた。
 現在は「ふたコブらくだ」と言われ、先生がどこに焦点を合わせて授業を行ったらよいかわからない状況となっている。それによって、オンラインを使用した個々にあった習熟度に合わせた授業が人気となっています。
 数年前に「数学のできない子を生み出す日本の教育」が記事となりました。数学、英語は積み上げ型の教科と言われている。ひとつ躓くと先に行けない。そこで、何が問題なのが、果たして今のカリキュラムは本当に合っているのか。AIを使い勉強のつまずきを分析し、従来のハシゴ型から教える順番を変えることで、つまずきを無くすカリキュラムの研究を行っています。また、昨夏から学芸大学と共同で「教員の働き方改革」の研究も行っています。日本の教員は世界一忙しい。ICTを導入したいと思っていても、忙し過ぎて導入できない状況にあります。
 本題に入る前に世界のテクノロジーの状況を確認、共有していきます。科学と工学分野の研究開発費・論文数については、中国が急激に増加しており、論文数については、昨年初めて中国がアメリカを上回った。科学と工学分野における学士号の数についても、中国が急激に増加しており、その人たちがIT産業に就くことで、非常に脅威を感じている。
 AIで先端を行くアメリカと中国のテクノロジーの状況としては、アメリカでは「GAFA(Google、Amazon、Face Book、Apple)」の4社が先導。中でもAmazonは2017年、日本円で2.3兆円を研究開発費として投入している。Amazon Go では、お店の中に入ってスマホをかざし、バッグに買いたいものを入れ、ゲートを通って帰る。お店を出たら30秒後にはレシートが届く。
 一方、中国は「BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)」が台頭している。これまでは、AI・テクノロジーの未来は、アメリカが最先端を行き、テクノロジーはアメリカを中心として回っていた。Kai Fu Lee氏(元Google ChinaのCEO)によると、この10年で全世界のAIへの投資の内、48%は中国へ、38%はアメリカへと流れ、アメリカと中国が逆転している。AI開発の点ではアメリカが上だが、技術を広げるのは中国にアドバンテージがあるのではないか。アメリカと中国をAIデータで比較すると、モバイルインターネット利用者データは、中国がアメリカの3倍、フードデリバリーでは10倍、モバイルペイメント(モバイル決済)は50倍。更に、これから5~6年でAIにより自動車の自動運転化が進むことにより、トラックの長距離運転手はいなくなるかもしれないと言われている。アメリカでは労働組合の強固な反対があり実証実験が難しい。一方、中国では労働組合がなく、政府が実証実験のための街をつくり自動運転の実証が可能。そういった点でも、開発はアメリカではあるものの、技術の普及は中国が上になるのではないかと言われている。
 AIによって仕事が奪われるのではないかというと、AIが全て取って変わるのではなく、部分的にAIが取って変わるのではないかと言われている。全体の5%と言われている。但し、単純作業でかつ感情が伴わない職種はAIに取って代わられてしまう。では、教員はどうかというと、生徒に対面するのは人である必要がある、教える部分はテクノロジーで可能な部分があるかもしれないと言われています。
IVLPでの体験
 IVLPとは1940年から始まったプログラム。私の場合はICT教育をテーマに約3週間全米を回った。24名おり、日本人は私1名のみ。言語は英語を使用しての滞在となりました。
 米国の教育制度の大きな特徴としては非中央集権。州が大きな役割を果たしている。公立学校の設立、運営に関する総合的権限は州に委ねられている。アメリカでは、例えばカリフォルニア州で教員免許を取ったとしても、そのままの状態ではワシントン州では教えることができない。教員免許は州ごとで取得しなければならず、学力テストも州ごとで定められている。州の下に学区があり、教員の採用、給与、カリキュラ等当についても学区単位で決められているその他、私立やチャータースクールが存在している。
 アメリカでは カリキュラムを超越して学校が展開されている。カリフォルニア州のサンディエゴにある公立学校 High tech Highでは、テストが一切なく文化祭で評価する。公立学校なので裕福な子ども達が通っているわけではない。しかし96%の卒業生が大学に進学(全米平均を大幅に上回っている)、35%は初めて大学に入学できた世代、63%は有色人種で42%がランチ補助(日本の就学援助にあたる)を受けている。
 Mostly likely to succeed のドキュメンタリー映画を見て頂くとわかると思うのですが、教育はこの100年変わっていない。お子さんの授業参観に行くと、私たちが受けた授業風景と全く変わらない。なぜこれだけ社会が変わっているのに、学校は変わっていないのかを訴える映画となっている。
 アメリカには落ちこぼれ防止教育法(No Child Left Behind―どの子も置き去りにしない)が特徴としてあげられます。これによって州の教育が設計されています。
 次にアメリカで屈指の大学MIT(Massachusetts Institute of Technology マサチューセッツ工科大学)の授業風景について話をします。一部の授業で反転授業(MIT Flipped Learning &Open education)が行われている。また、アクティブラーニングも行われている。1対40の教授法ではなく、それぞれの子ども達が先生を交えて一緒にデスカッションしていくような授業スタイルです。
 統計学を例に取ると、まずは自宅でオンラインを使い、次の授業内容を学習していく。クラスの中では他の生徒とコラボレーションや作業をしたり、発表をしていく。MITで反転授業は主流ではないが、このような授業スタイルが広がりを見せている。自分の関心に沿ってグループを作り、集まって勉強しています。
 アクティブラーニングや反転授業に関して、どのような評価があるのかというと、学生は他の人に教えることによって学びが深くなった、先生は自分たちも楽しいと感想が出ているそうです。1対40、1対50の授業を行うより、相互的な関係で授業を行う方が楽しい。先生は動画を取って配信しており、事前学習として動画を見られるようになっている。動画では教師が視聴者を見ながらボードに書いても、それが反転しないLightboardを開発した。これはどういうことかと言うと、学生の集中力は意外な所で切れてしまう。例えば、先生の姿が見えなくなる、背中を向けると生徒の離脱率が高くなる。非常に画期的な開発である。
 また、MITはMicro Mastersを行っている。ビジネス系の教科で取り入れられており、オンラインで授業を受け、資格ももらえる。24万3千人が受講し、最終的に資格をもらった人は2万1千人。残念なのは、日本からの受講者がほとんどいないということで、かなり嘆いていらした。受講生は、アメリカ、インド、ブラジル、メキシコ、中国、コロンビアなどが主流とのことだった。
 次に、ケンタッキー州における教育概況について。ケンタッキー州は、都市部を除いて保守的な地域。日本では保守的な町は、ICTが進んでいないイメージがあり、実際に進んでいない。だがケンタッキー州は全米で唯一WIFI普及率100%、最近ハワイ州が100%になったので、現在50州の内2州のみ。非常にテクノロジーに力を入れており、且つ75%の学区でBYOD(Bring your own device、私物の情報端末を持ち込んで利用すること)が実施されている。先生もテクノロジー効果があることを認識しており、90%の生徒がオンラインの授業を受講している。
 アメリカは格差社会。学校に行けなかった子ども達、中退した子ども達、もしくは社会人になって高校に戻りたい、高校の卒業資格が欲しいという子ども達が戻ってくる学校がある。
その学校でEラーニング(コンピューターを利用した教育や学習)を行っている。全教科を家で学び、資格も単位も取れるということで、非常に活用されている。
更にこれから教育が変わっていくと思われる要素がある。CESとよばれている世界最大規模の家電ショーが、毎年1月にラスベガスで開催されている。5G(いっそう高速かつ大容量通信が可能になる次世代通信規格)が今年の秋、遅くとも来冬、日本に入ってくると言われている。5Gが導入されるとスピードが速く、容量が増え、かつ反応速度が速くなる。具体的に分かるように例を挙げると、4Gで2時間の映画をダウンロードすると約6分、5Gになると3.6秒で可能になる。5Gの導入により教育で使われるコンテンツが変わってくる。教育の世界では、動画のコンテンツが中心になってくると思っています。
 
参加者からの質問に対する回答
●BYODを持っていない生徒には、持っていないことで格差が出ないように行政・高校が貸し出しをしている。日本でも奈良の市立一条高校というところがBYODを実施している。9割が持っているが、持っていない生徒には学校や市が貸与している。上手くいっている所は、市長、教育長、学校長がともに前を向いて、どうして行こうという共通認識がある。
選挙で長が変わってしまうと後退してしまうこともある。
●PBLは何か一つの目的に添って子ども達が集まって、一つのゴールを創っていくことが重視されており、それを究極的に行って成功したのがHigh tech High。アメリカの大学では、エッセイ(小論文)が重視されており、自分がこれまでどういうことをやってきて、どれだけ社会に還元してきたかを一番見る。州で定められた学力テストは受けている。
●またPBLには2通り、Problem Based Learning(問題解決学習)と Project Based Learning(プロジェクト学習)がある。日本でも順次、取り入れている学校もある。 
●学費については、通学する場合700万円くらいかかるところ(それ以上かかるところもある)、研究したい学部が限定される場合もあるが、オンラインであれば60万円くらいで受講できるものもある。但し、オンラインで学ぶ場合、1点だけ不利があるとすれば、有名大学は同級生のネットワークをとても重視している。卒業してからどれだけOB、OGのつながりをつくれるか大切にするので、オンラインで学ぶ場合は、その点が弱いかもしれないと個人的には思う。
●特別障害学級を訪問する機会はなかったが、個人的にサンフランシスコ、シアトルで特別支援学校を見る機会があり、テクノロジーが普通学級より多く使われていた。発達障害等のお子さんの場合、テクノロジーを使用した方が効果的な場合が多い。多動のお子さんがアルファベットの練習をするのに、15分座っていることが難しかったが、デバイスを渡して文字の練習をしたら、30分以上勉強する事ができた事例などがある。日本でも同様で、特別支援学校の方が多く使われており、資金も潤沢なので、これまで以上に活用されてくると思う。
●私たちの学んできた英語の勉強は、文法シラバスで学んできているが、実際に言葉を使うとなると文法事項を飛び越えたような活動をしていくことは重要。ただそれだけやっていると、英語は話せるが正しい表現はできない。つまり話せるが相手には伝わらない表現になってしまう可能性がある。文法はあくまでコミュニケーションを支えるツールとして必要。
最終的に書き言語、読み言語に接する時は文法能力がないと、正しく伝わらない・理解できないので、文法能力は必要です。
 
終わりに
 地球規模で言葉も考えも異にする人間が共存する「多文化共生社会」が現実になっている。リアルな世界における教育・学習を支える言語技術の習得、そして日々に進化するICTが教育・学習現場にどのような状況を作り出すのか。
 最先端の研究者であるお二人の話は刺激的で、かつ示唆に富むもので、聴講された皆様にはそれぞれ今後の活動に資するものがあったのではないでしょうか。(M.H)